No.15 TMGあさか医療センター
伊藤雄二先生

「腹腔鏡手術件数」
全国5位を誇るスペシャリスト
他院からの信頼厚く、
難症例にも全例腹腔鏡手術で対応
TMGあさか医療センター
婦人科腹腔鏡手術センター センター長
伊藤 雄二 先生
いとう・ゆうじ
2009年、神戸大学卒業。2018年11月、TMGあさか医療センターで「婦人科」を立ち上げ、2021年、全国屈指の腹腔鏡手術件数を誇る「婦人科腹腔鏡手術センター」を創設。全国の大学病院・総合病院から医師が手術見学に訪れる施設として知られる。2023年度(令和5年度)TMGあさか医療センターにおける病院指標「腹腔鏡手術件数」が全国5位に(腹腔鏡下膣式子宮全摘術より比較)。また、2023年2月、読売新聞「病院の実力」全国版では同院の腹腔鏡手術件数が全国トップ10入り(2026年2月の同コーナーでも全国9位にランクイン)。2023年、外科系医師に向けた著書『手術技術向上論』を発刊(メディカ出版)。現在に至る。
【取得資格】
■日本産婦人科学会 専門医
■日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医(腹腔鏡)
■日本内視鏡外科学会 技術認定医(産婦人科領域)
■日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
■米国婦人科腹腔鏡学会所属
「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」(厚生労働省 平成20年4月1日付)に基づく研修修了
※2026年2月の取材時時点
確かな“技術”で信頼を獲得
―――まずは伊藤先生が考える腹腔鏡手術の優れた点をお教えください。
- 一般的に腹腔鏡手術は開腹手術よりも「傷の痛みが軽い」「社会復帰が早い」「傷が目立たない」等のメリットが取り沙汰されていますが、最も優れているのは「細かく手術が行える」点です。一昔前までは開腹手術の方が丁寧だと言われていました。しかし今でははるかに腹腔鏡手術の方が細かく丁寧な手術ができます。要因は器具の先端に付いているカメラ。拡大可能な為、術者は大きなモニターで細かい組織までよく観察できるようになりました。デメリットは「手術時間が長いこと」。ただ、術者の習熟度によって腹腔鏡手術の方が早い場合があります。私は通常2~4時間かかる「子宮全摘出手術」を平均1時間、早い時で35分で終了させることもあり、そのうえ出血量も少量で終わります。当センターに関しては全例腹腔鏡手術で対応しています。
―――対応する疾患について教えてください。
- 主な疾患は子宮卵巣良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣嚢腫、子宮内膜症)、子宮脱、帝王切開瘢痕症候群、子宮体がん等です。特に子宮内膜症の手術は力を入れており、内膜症性嚢胞の切除だけではなく、深部内膜症結節の切除も行います。また、他院で開腹手術を勧められた方、巨大な腫瘍(子宮筋腫・卵巣嚢腫)や癒着を指摘されている方(複数の開腹手術歴がある方、子宮内膜症性癒着)の手術も行います。
当センターは2018年の開院時より徐々に実績を増やし、2021年の年間腹腔鏡下手術数は約500件、現在では約700件と件数を伸ばし続けています。その多くが大学病院・他の総合病院からの紹介です。
―――なぜこれほどまでに実績を伸ばしているのでしょうか。
- 一番は“確たる技術”があるからだと思います。手術の根本である“技術”がなければ、どんな取り組みを行っても結果にはつながりません。先述したとおり、「子宮全摘出手術」は通常2~4時間かかるとされていますが、症例によっては短時間で終了することもあります。また、術後の合併症をできる限り抑え、早期回復につなげることを常に意識しています。他院では難しいとされる症例も多くお引き受けしていますが、特別なことをしているというよりは、目の前の患者さん一人ひとりに対して、安全に対する強い責任感を持ち、丁寧に向き合い続けてきただけだと考えています。婦人科を立ち上げた当時からこの姿勢は変わらず、難しい手術であっても一つひとつ真摯に取り組んできました。その積み重ねが、結果として信頼につながり、他院からの手術依頼にも結びついているのだと思います。
もちろん地域の先生方への挨拶回りも大切にしてきましたし、紹介状の返信についても、手術経過や時間・出血量に至るまで丁寧にお伝えすることを心がけています。その一つひとつの積み重ねが、現在の実績につながっているのだと感じています。
―――腹腔鏡手術の“最後の砦”としての役割を果たされている伊藤先生。“技術度が高い”とは具体的にどういったことなのでしょうか。
- 私の著書『手術技術向上論』にも記していますが、手術スキルの向上には大きく2つの能力が必要だと考えます。ひとつは『手が思い通りに動く能力(手先の器用さ)』。もう一つは『正確に術野を認識し判断する能力』です。前者はひたすら練習するしかありません。私の場合、最初に勤めた施設で1日5~6時間練習し、ひとり合宿も行うほど練習に没頭していました。後者は経験を積むことです。それも難しい症例を多く目に焼き付けること。「こうしたら良い・悪い」の認識・判断能力が身に付き、施術の引き出しも多くなります。



若い世代に向けた医療に携わりたい
―――伊藤先生はなぜ腹腔鏡をメインでやろうと思われたのか。
- “腹腔鏡をメインに”と考えた理由のひとつはイタリアのMario Malzoni先生の存在が大きいです。15年前、先生は子宮頸がんの手術を腹腔鏡で行っており、当時6~8時間かかっていた手術を2時間で終わらせていました。それもただ早いだけではなく、出血もほとんどない丁寧な手術で、非常に印象に残っています。私はその先生に憧れ、今でもその背中を追っているところです。
―――産婦人科の道を選んだキッカケは?
- 私が婦人科の道に進んだのは、若い世代の患者が多いからです。婦人科を受診する患者の多くは30代、40代。現代の医療は≒高齢者医療ですが、私は30代という若さで子宮頸がん、子宮内膜症、子宮筋腫等に罹患した方たちの未来を支えたいと考えました。それは私自身、小学校の頃、重度のアトピーで1年間休学を余儀なくされた経験があったからです。若くして病気にかかる辛さを少しでも軽減したいという思いがあります。
また、安全なお産に携わりたいという考えも大きな理由のひとつです。遺伝子異常などにより障害のあるお子さんが生まれることは一定の割合で避けられませんが、安全でないお産によって重大な後遺症を持つお子さんが生まれてしまうことは、できる限り防ぐべきだと考えています。そのような事態はご家族、特にお母さんにとって大きな負担となり得るため、それを少しでも減らしたいという思いがありました。もちろん高齢者に多い症例の「子宮脱」も多く扱っていますが、若い世代に向けた医療に携わりたいという考えが根底にあります。
―――今後のビジョンをお聞かせください。
- 現在、当センターは医師4名の体制で進めていますが、今年7月にがんの専門医が1名加わる予定ですので、大いに活躍して欲しいと思います。また、当施設は「一般社団法人 日本産科婦人科内視鏡学会」の研修施設に認定されており、これまで4名認定医として合格させています。今後も後進の育成には注力していきたいです。
もちろん、腹腔鏡手術数をさらに増やしていきたいと考えています。ただし、数字だけを追うのではなく、安全な医療を継続して提供していくことが最も重要です。そうした積み重ねが、結果として患者さまの信頼につながるのではないかと考えています。
―――本日はありがとうございました。












