No.14 戸塚共立いずみ野病院 柁原俊久先生

一人ひとりに合わせた
人工股関節置換術(THA)・人工膝関節置換術(TKA)が可能に
ロボティックアーム手術支援システム「Mako(メイコー)」

戸塚共立いずみ野病院
人工関節センター センター長
柁原 俊久 先生

かじわら としひさ
●専門:股関節外科、膝関節外科、外傷外科
●資格:日本整形外科学会 専門医、 日本人工関節学会 認定医
●役職:昭和医科大学藤が丘病院整形外科 兼任講師、日本股関節学会 評議員、
    日本人工関節学会 評議員、日仏整形外科学会 幹事、
    外科系学会社会保険委員会連合 委員

整形外科手術におけるナビゲーション、ロボットなどのコンピューター支援技術(CAOS:computer assistedorthopaedic surgery)は手術の正確性に加えて執刀医のヒューマンエラーを減らし、臨床成績が向上されるとして現在全盛を極めています。なかでも注目されているのがロボティックアーム手術支援システム「Mako(メイコー)」(日本ストライカー社)です。戸塚共立いずみ野病院は今年6月、同システムを導入した「人工関節センター」を新設。変形性股関節症・変形性膝関節症に対する人工関節置換術を行っています。今回はセンター長である柁原俊久先生にMakoシステムについて、そして今後のビジョンについて伺いました。

ロボット支援手術Mako は人工関節領域におけるひとつの完成形

―――Makoの特長をお教えください。

 私自身、前職場で2022年~2025年5月までの3年間、Makoを使用した手術を約500症例行ってきました。Makoに携わって思うのは“正確性・精度”の高さです。これは疑いようもありません。手順としては、まず術前にCT画像をもとに関節の状態を三次元データ(3D)で再現し、患者さま一人ひとりに合わせた治療計画を立てます。術中はロボティックアームが医師の手術操作をリアルタイムでサポート。これによりインプラントの設置精度が格段に向上し、骨・関節の配列も最適化されます。また、計画外の動作を検知すると、ロボットが自動的に動きを停止するため、血管や神経へのダメージを最小限に抑えることができます。患者さまの負担軽減が期待できるのが特長です。

―――CTナビゲーションとロボット支援手術Makoの違いをお教えください。

 CTナビゲーションは、3D画像をリアルタイムで表示し手術器具の正確な位置を追跡する機能を備えています。対してMakoは、精密な動作を可能にし、手術の精度を高めるだけでなく、医師の疲労を軽減する役割も果たします。具体的には手術時のロボティックアームによる補助です。これにより術前計画通り動的に掘削、設置を行うことが可能となり、軟部組織バランスや骨の状態をリアルタイムで確認・修正できます。端的に申しますと、前者は術前計画を忠実に再現する役割にとどまるのに対し、後者は術中の柔軟な調整が可能なのです。

―――医師の負担が軽減する役割は大きいですね。

 その通りです。CTナビゲーションの場合、医師は術前プランニングに非常に時間を要します。一方、Makoの場合は業者が大まかなプランニングを行い、術者が細部の確認と調整を行います。また、難しい症例でも単純化することが可能となり、手術に参加する医師の人員も削減できます。私は人工関節領域において、Makoはひとつの完成形であると考えます。

―――他に医師へのメリットはありますか?

 新人医師の教育的ツールとしてMakoは非常に有効です。確かに、新人が初めからロボットに携わると、環境が整っていない施設での手術が出来なくなるのではないか……といった危惧はあります。ただ、制御がきかない難しい手術よりも、計画通り正確に制御できる手術を多く重ねた方がストレスも掛からず大きな学びになると考えます。また、Mako は人工股関節置換術(THA)と人工膝関節置換術(TKA)の両方に対応しますので、運営する病院側のメリットになることはもちろん、どちらの手術も対応可能な医師のキャリアアップにもつながります。

―――今後、Makoは日本の人工関節領域においてどうなっていくとお考えですか?

 近い将来、スタンダードになっていくと考えます。Mako 自体、高価なものではありますが、現在、多くの専門的な大学病院で導入が進んでいます。また、股関節に関しては、欧米では加齢とともに悪化する患者が多く比較的単純な手術で済む場合が多いのですが、日本人は特殊な形態が多いため難しい症例の比率が高い。ですので、海外よりも日本でこそ流行る意味がありますし、今後も人工関節のロボット市場は急速に拡大していくと考えます。

―――今後のビジョンをお聞かせください。

 Mako導入によって私が一番実感しているのは医師の負担が軽減したことです。その分、医師は患者さまと向き合う時間を増やすことができます。また、先述した通り、Makoは教育ツールとして優れていますので、技術は代々つながります。医師も患者さまもハッピーになること、それが社会全体でいうサスティナビリティにつながるのではないでしょうか。また、日本人の平均寿命は延伸していますが、元気に自立して過ごせる「健康寿命」との間には約10年の差があります。その主な原因のひとつが整形外科疾患です。関節の痛みに悩む方々に「再び動く喜び」を取り戻してもらいたい。当院ではロボティック技術と専門チームでこれまで以上に安心して受けられる人工関節手術の提供を進めてまいります。

―――本日はありがとうございました。

戸塚共立いずみ野病院
神奈川県横浜市泉区
和泉中央北1丁目40-34
TEL:045-800-0320(代表)