No.12 TMGあさか医療センター 小林左和子課長/石原善実さん/石ヶ森健太さん

年間5,800件の手術を支えるオペ室看護師
〜TMGあさか医療センター42名の戦士たち〜

年間5,800件と、TMGでも屈指の手術件数を誇るTMGあさか医療センター。その数を影で支えているのが42名のオペ室スタッフ(看護師36名、看護補助者5名、クラーク1名)です。今回は手術室の立役者として奔走するオペ室看護師に迫ります。

徹底的な“予防”がオペ室看護師の役割

―――問題なく終了するのが“当たり前”の世界

「オペ室看護師の仕事は“予防”のひと言につきます」
そう話すのは手術室看護一筋22年で所属長の小林左和子課長。オペ室看護師が最も注意を払うのが術中・術後に起こりうる合併症です。術中、患者の体位が不適切だと、体重や外部圧迫により末梢神経障害や皮膚トラブル、呼吸・循環障害が起きることも。それが長時間になるほど発生頻度や障害の程度も大きくなるため、手術の速やかな進行が求められます。
「我々がいくら安全に対応しても患者さまから感謝はされません。それは、問題なく終わることが“当たり前”だからです。反対に神経障害や皮膚トラブルが起こったら大問題。訴訟にもなりかねませんので、合併症予防は徹底して行っています」
円滑な器械出しも“予防”につながると小林課長。「全身麻酔の患者さまは痛みも意識もありません。それだけ強い薬ですから体へのダメージも相当なもの。ですから、麻酔時間や手術時間の短縮が望まれますし、スムーズな器械出しが求められるのです」
入職6年目の石原善実さんも「オペ室看護師が第一に考えるのが合併症予防」とのこと。「外回り看護師は安全に手術が行えるよう麻酔科医や執刀医の先生、病棟や外来の看護師たちと情報共有して術前のリスクをアセスメント(評価・査定)します。術中は正しい体位固定や体温管理を行い、神経障害や皮膚トラブルを予防。執刀医が確実に手術執行できるよう介入しながら、広い視野で合併症予防に努めています」
同じく入職6年目の石ヶ森健太さんは「局部麻酔だと患者さまの意識もあるので、術中に患者さまの好きな曲を流すなどコミュニケーションをとるようにしています。比較的軽い手術であっても、患者さまからすると“手術台にあがる”ことは精神的にかなり負担が大きいので“心に寄り添うこと”は意識しています」と言います。

―――手術は究極の“チーム医療”

同院では、オペ室8部屋、血管造影検査室2部屋を毎日稼働させ、年間5,820件、月500件弱の手術を行っています。小林課長はこれだけフル稼働できているのは医師の力が大きいと話します。
「医師の高い技術力がオペ時間を短縮させています。また、ダヴィンチや最新機器などの取り扱いも、医師、麻酔科医、臨床工学技士、放射線技師等の多職種で連携がとれて運用できているのも当院の強み。一番の苦労は、制限がある『人』『モノ』『環境』において、いかに稼働を止めずに進行させるか。人は揃うがモノ(手術器械等)が足りない、モノはあるが環境(オペ室)がない……この3つを滞りなく進めていくことが私の使命ですね」
毎日20件以上もの手術をこなすオペ室看護師。これだけの数をこなすなか、業務が「流れ作業」にならないようにも努めている。
「患者さまは人生をかけて手術に臨んでいるので、そこを意識して短時間でも良い関係が築けるよう真摯に向き合っています」と石原さん。石ヶ森さんは「患者さま一人ひとり症状も状態も違いますので、術中は表情や肌の質などを見るなど、よく観察するようにしています」と言います。
3人に共通しているのは“オペ室看護師の仕事が大好き”という点。石原さんは「問題なく手術が終了し、術後の合併症がなく経過されている姿を見ると達成感があります」と話し、石ヶ森さんは、「私は整形外科手術を主に担当しているのですが、術後のレントゲン写真を見るのが好きです。綺麗なんですよ。無事にやり遂げたときは嬉しいですね」と仕事のやりがいを話してくれました。
今後の展望について小林課長は語ります。
「手術は『ザ・チーム医療』です。皆で協力して無事に安全にやり遂げたときの達成感は何ものにも代えがたい。我々はこれまで、安全第一に進んできましたが、今後は『質の向上』にも努めていきたい。術前訪問を充実し、より完璧に手術が遂行できるよう“質を上げる看護”にも今後は力を入れていきたいです」

麻酔科医から見たオペ室看護師の凄さ

当院のオペ室看護師はとにかく明るく前向き。コミュニケーション能力が高いので、何かあったときはすぐ声掛けしやすいのが特徴です。また、患者さまを第一に考えて行動してくれています。すごいところは勉強熱心な姿勢。血管造影センターでの治療や検査は特殊性が高く、普通は専門の看護師が対応するのですが、当院のオペ室看護師は貪欲に勉強して対処してくれています。また、循環器や脳神経外科など秒単位での治療が多いのですが、そのスピードにもきちんと対応してくれています。

オペ室看護師の業務

手術が安全かつスムーズに進むよう患者のケアや介助、医師をサポート。主に『器械出し』と『外回り』があり、前者は執刀医が必要とする器械や機材を迅速かつ正確に渡す役割で、後者は手術室の環境整備や医療機器の準備、温度調整、患者の体位変換や全身状態の確認、手術記録、患者さまの術前訪問・術後ケアなど、幅広い役割を担う。

TMGあさか医療センター
埼玉県朝霞市溝沼1340−1
TEL:0570-07-2055(代表)