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【戸塚共立訪問看護ステーション】医療者への読書案内

施設行事もイベントもなく、粛々と訪問業務に従事する日々…お出かけできないこの時期に提供できるのは、人生既読冊数3000冊(概算)の情報くらいでしょうか。
働く皆さんの気分転換に、学生の小論文対策に、というのはこじつけで、「医療事物」に食傷気味の医療者であっても、むしろ医療者だからこそおすすめしたい本があります。

「いま、希望を語ろう 末期がんの若き医師が家族と見つけた「生きる意味」」
ポール・カラニシ 田中文訳 早川書房

お涙頂戴でもなく、バイタリティ溢れて只管に前向きなだけでもない。とにかく世に蔓延る所謂「余命モノ」(←偏見あり)を覆す良作。文学を専攻したのち哲学科を経て医学へ進んだという著者だけあって、ドキュメンタリーというより、避けられない生死の哲学的課題を包容する文学作品。
キャリアの積み重ねや医学生の実態が語られる前半は、東洋問わない見覚えある医療者ネタが楽しく、著者の率直で真摯な人柄がよくわかる。発症、復職、娘の誕生、再発という後半で描かれるのはアイデンティティが揺らぐ記録であり、研ぎ澄まされた感性に読み応え抜群。
そして最終章、未完のこの記録を引き継いだ妻によるエピローグもまた素晴らしい。「死から目をそらさないというポールの決意は、死という問題を回避する文化の中で生きる私達がいくら称賛してもし足りないほどの精神力を表している。」
訳者も医師であり、医療的な記述はもちろん、文章や表現も味わえる名翻訳。
ただ一点残念なのは、売るための宣伝文句のような邦題が陳腐なこと。原題は「When breath becomes air」という詩的なものなのに。

文責:戸塚共立訪問看護ステーション 沖 奈海

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