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専門医より

 

◆ C型肝炎のお話

田園調布中央病院 顧問  福島 元彦

 

C型肝炎とは?

C型肝炎は、血液を介してC型肝炎ウイルス(HCV)(図1)が感染することによって発症します。HCVは肝炎ウイルスとしては最後にウイルスゲノムが発見されました(1989年)。ウイルスに感染すると、肝臓の炎症が起こり肝臓の細胞が壊されて働きが悪くなりますが、急性期でも自覚症状がない場合が多く、全身けん怠感や食欲不振、悪心・嘔吐、黄疸などの症状がみられる人は2~3割にすぎません。


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また、HCVに初めて感染した場合、30%の人では自然に治癒しますが、残りの人はウイルスが棲みついた持続感染の状態に陥ります。持続感染者をキャリアといいます。キャリアの多くが自覚症状のないまま、炎症が持続しC型慢性肝炎となり、一部の人は肝硬変に進展します。現在150万人以上の人がキャリアと推測されています。

 

C型肝炎はなぜこわい?

平成15年の疾病分類別人口動態統計では肝臓癌*で亡くなられる患者さんは年間約3万人に及び(厚生労働省人口動態統計)、男性では癌による死亡率において、肺癌、胃癌に次いで第3位に位置します。

肝臓にできるガンを原発性肝癌、肝臓以外の臓器のガンから肝臓に転移したものを転移性肝癌といいます。日本を含む極東・東南アジア地域では原発性肝癌の95%が肝細胞由来の肝細胞癌です。一般的に肝臓癌といえば肝細胞癌を指します。
肝臓癌のほとんどの方は慢性肝炎や肝硬変などの肝障害を伴っており、特にHCV感染者が70%以上を占めています。

つまり、HCVキャリアであるC型慢性肝炎の方は肝臓癌の発癌リスクがあきらかに高く、充分な注意が必要です。

 

C型肝炎ウイルス感染の可能性が一般より高いと考えられている人は?

a.過去に輸血を受けた方
日本では輸血用の血液は1992年2月から精度の高い第二世代HCV抗体を測定しHCV感染の有無をチェックしており、輸血後の肝炎発生はほとんどなくなりました。1999年10月からは核酸増幅検査(NAT)が全国的に導入されたことから血液の安全性は一段と向上しています。ただし、感染から間もない「ウィンドウ・ピリオド」中に献血された血液は、NAT 法によるスクリーニングによっても100 %除外することはできません。

b.長期に血液透析を受けている方

c.過去に大きな手術を受けた方

d.輸入非加熱血液凝固因子製剤やフィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)を投与された方
昭和63年(1988年)以前の血液凝固第VIII、第IX因子製剤やフィブリノゲン製剤は、これらの製剤の原料(血液)中のHCV検査、あるいはHCVの不活化が十分になされていないものがありました。フィブリノゲン製剤は、産科の疾患などで出血が多かった方や、大きな手術をされた方に使われた可能性があります。

e.薬物濫用者、入れ墨やボディピアスをしている方

f.臓器移植を受けた方

g.健康診断等で肝機能異常を指摘されているのに肝炎の検査を実施していない方

これらの方はひょっとしたらと考え、積極的に検査を受ける必要があります。

 

C型肝炎の検査法は?

血液検査をしてまずHCV抗体が陽性かどうかを調べます。
陽性の場合は、C型肝炎の疑いありと判定され、(1)HCVキャリア(持続感染者)か(2)HCVに感染したが治ってウイルスが体内にいなくなってしまった人(感染既往者)のいずれかということになります。

この両者を鑑別するためにHCV-RNA (体内のHCVの量を調べる)の検査を受けます。HCV-RNAが上昇していれば、C型肝炎と最終的に診断されます。感染既往者ではHCV-RNAは陰性になります。このほかHCV抗体の量(HCV抗体価)測定やHCVコア抗原の検出法も組み合わせて行われています。

 

C型肝炎の治療法は?

大きく分けて、(1)ウイルスを減少させ最終的に排除を目的とした治療(抗ウイルス療法)と(2)トランスアミラーゼ(肝臓に含まれる酵素で肝細胞が壊れると血液中の値が増加します)であるGPTをできるだけ正常化する治療(肝庇護療法、瀉血療法)が行われています。

抗ウイルス療法はインターフェロン投与を中心としたC型肝炎ウイルスを排除し完全治癒をめざす治療法です。近年、特徴の異なるさまざまな種類のインターフェロンが開発、実用化されています(表1)。


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徐放性のインターフェロンであるペグインターフェロンと抗ウイルス薬のリバビリンとの併用療法は効果の高さ(「難治性のC 型肝炎」でも50%近いHCV-RNA陰性率が報告されています。)や投与の簡便さから現在では第一選択となる症例が最も多い治療法です。

当院では本法を安全に行うため患者の体調を記載した体調チエックシートと具体的な投与量、投与法、検査データを記載した情報ワークシートを作成し治療に導入しています(図2図3)。

抗ウイルス療法の適否やインターフェロンの種類の選択には、全身の状態、肝機能、肝臓の炎症や繊維化の程度の他に、血液中のHCVの量やHCVの遺伝子型(ジェノタイプ)などを詳しく調べ決定します(表2)。


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基本的に抗ウイルス療法によりウイルスを駆除することが望ましいわけですが、全身状態の不良で抗ウイルス療法を選択できない場合や充分な治療効果が得られなかったり、薬による副作用で治療が継続できなくなったりすることもあります。この様にHCV の排除ができない(かった)例で、肝庇護療法を行います。肝庇護療法では、ウルソデオキシコ-ル酸製剤、グリチルリチン製剤などの薬を組み合わせて用います。これらの薬には、HCV量を減らす作用はありませんが、肝臓の炎症を抑制(血清GPT値低下作用)し慢性肝炎の進行を遅らせる作用があります。

またインターフェロン療法や肝庇護療法が無効な場合、瀉血療法は体内の鉄を不足させることで、C型慢性肝炎例のGPT 値を低下させることができ、治療法のひとつとして使われるようになってきています。

 

おわりに

肝臓癌の手術も近年、器材の進歩により無輸血の手術があたりまえとなり、手術以外にも動脈塞栓術やラジオ波凝固療法など有効な治療法が開発され臨床応用されています。しかし前述したように多くの人が肝機能の障害を伴っており、過去の経験でも充分な治療ができない方が多いのも事実です。2015年まで肝臓癌の発症はさらに上昇することが予想されており、発癌防止のためC型肝炎の発見と治療はきわめて重要です。輸血の既往のある人、大きな手術を受けた人、肝機能の異常を指摘された人もしかしたらと考え、血液検査を受けC型肝炎ウイルス感染有無をチェックしてください。

また発癌のリスクが高いにもかかわらず、高齢や心疾患などの理由で適切な肝炎治療が選択されていない場合もあります。治療は常に進歩しています。すでにC型慢性肝炎と診断された人は、現在肝機能が全く正常な方も、いま一度ウイルスの量や遺伝子型を確認し、肝機能検査の経過を長期間観察することが必要です。さらに肝臓癌の早期発見のため、血液検査に加え、超音波検査、CT/MRI検査などの定期的な画像検査を受けましょう。

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