2006年 5月号

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トピック

 副院長  鈴木 恵史


近ごろ、ピロリ菌と言う細菌を時々耳にすることがあると思います。今回はこのピロリ菌についてお話いたします。ピロリ菌は正確にはヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)と言います。Helicobacterとはhelical(らせん:ヘリコプターのhelico)なbacteria(バクテリア) という意味であり、pyloriは菌が見つかった場所が胃の出口付近であり、胃の出口である幽門(pylorus)に由来しています。


1.ピロリ菌の歴史

1900年代初めに胃内にラセン形の細菌が存在する報告がありました。しかし、酸度の高い胃液がある胃内では、細菌が生存できるか疑問に思われ、その後長い間無視されてきました。ところが、1980年代前半にオーストラリアの病理学者がこのラセン菌に着目し、この細菌の存在するところには、胃炎が認められることに気付き、この細菌が胃炎の病原菌ではないかと考えたのです。さらに胃炎の部位の胃の組織を胃カメラで採取し、この胃内に存在するラセン菌の分離培養に成功しました。このことがアメリカの世界的に有名な科学雑誌に報告されて世に知れ渡り、その後も胃十二指腸疾患との関連の報告が多く有り、現在にいたります。

 

2.なぜピロリ菌は胃のなかで生存できるか

胃の粘膜(胃の壁の一番内側)上には中性の薄い粘液層があり、胃が分泌する酸や消化液から胃の粘膜を守っています。ピロリ菌はこの粘液層の中に生息し、濃い胃酸の中にはいないのです。また、ピロリ菌はウレアーゼと言う物質を分泌して、胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。このアンモニアがピロリ菌の外側に膜を作ってバリアとなり胃酸と接触しないのです。このようにして、ピロリ菌は胃のなかで生存しています。

なお、ピロリ菌はラセン形で複数の鞭毛を持ち胃の中でコイル状の運動をして動いています。

写真右:(ピロリ菌の電子顕微鏡像)

3.ピロリ菌はいつどこで感染するか

ピロリ菌は吐物や糞便とともに体外に出て、再び水や食べ物などとともに飲み込まれ胃内に入ると考えられています。さて、体外に出たピロリ菌は生存環境が悪化すると、らせん形から球形に形態を変化させて乾燥などの悪条件の中でも生存することが解っています。

現在、わが国のピロリ菌の感染率は若年者では低く、50歳以上では約70%です。年齢により感染率が増加していますが、加齢により感染率が増加するわけではなく、今後は衛生環境の整備により感染率は全年齢で低下することが予想されています。

ピロリ菌

それでは、ピロリ菌にはいつ感染するのでしょうか。多くの研究により、ピロリ菌感染は胃酸分泌や胃粘膜の防御機構が未熟な小児期に起こることが明らかとなってきています。そして、成長とともに長期にわたり持続感染します。また、成人への初感染はまれで感染しても一時的で持続感染はしないことが多いとされています。現在日本ではピロリ菌感染に重要であるのは家族内感染、なかでも母子間感染とされています。これは、ピロリ菌陽性の母親が咀嚼した食物を乳幼児に与えることによる感染と考えられています。

感染予防のワクチンはまだ無く、予防のためには、糞口感染、口口感染を起こさないように排便後の手指の洗浄、咀嚼した食物を乳幼児に与えないことが重要でしょう。

 

4.ピロリ菌の診断と治療

ピロリ菌の診断と治療は日本ヘリコバクター学会によるピロリ菌の診断・治療ガイドラインに従って行なわれます。

このガイドラインに示された検査法には胃内視鏡による生検組織を必要とする検査法として迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法があり、胃内視鏡による生検組織を必要としない検査法として尿素呼気試験、抗H. pylori抗体測定、便中H. pylori抗原測定があります。

ガイドラインによるピロリ菌の除菌治療の適応疾患の中で、除菌治療が勧められる疾患としては、1. 胃潰瘍,十二指腸潰瘍,2. 胃MALTリンパ腫とされています。また、除菌が望ましい疾患としては3. 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除後胃,4. 萎縮性胃炎,5. 胃過形成性ポリープが示されています。なお、保険適用となっているのは胃潰瘍,十二指腸潰瘍のみです。

保険適用となり治療に用いることができる薬剤はプロトンポンプ阻害薬(消化性潰瘍治療薬)である(1) ランソプラゾールまたはオメプラゾール,と抗菌薬である(2) クラリスロマイシンと(3)アモキシリンの3剤を1日2回同時に1週間内服します。なお、除菌治療の副作用の主なものとして下痢・軟便(約40%)、味覚異常(約20%)があります。

 

5.ピロリ菌と胃癌の関係

ピロリ菌感染をWHOが胃癌の原因の一つとして指定したこともあり、ピロリ菌と胃癌の関係が大きく報道されました。しかし、このメカニズムはまだ解明されていません。ピロリ菌に感染し慢性胃炎の状態となり、何段階かの変化を経て胃癌となる可能性は考えられますが、必ず胃癌になるわけではなく、ピロリ菌の遺伝子の違い、宿主、環境、その他の条件が組み合わさり胃癌にいたると思われます。日本人のピロリ菌感染者は約6000万人とされていますが、そのうち胃癌に至るのは約0.4%と推測されています。また、胃・十二指腸潰瘍を発症するのは2~3%とされています。なお、ピロリ菌を除菌することによる胃癌予防効果は解明されていません。

今回はピロリ菌についてお話しいたしましたが、ピロリ菌、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃癌など胃に関する病気について不安をお持ちの方は、どうぞお気軽に消化器科外来に声をおかけください。

副院長  鈴木 恵史

日本胃癌学会評議員 日本臨床外科学会評議員
日本内視鏡外科学会評議員
日本内視鏡外科学会技術認定(消化器外科)
日本外科学会指導医、専門医
日本消化器外科学会指導医、専門医
日本消化器内視鏡学会指導医、専門医
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
日本消化器病学会専門医


トピック 

検 査 科


最近、TVや雑誌でも注目の睡眠時無呼吸症候群ですが、当院でも4月より検査がはじまりました。
平日限定お一人様
検査可能です(要予約)

● 検査方法 

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と呼ばれる検査器機を使用します。
頭、顔をはじめ体全体にセンサーを取り付けます。

センサーは脳波、呼吸状態、眼球運動、血液中酸素濃度、体位、心電図などを見ています。取り付けるセンサー類はたくさんありますが、針を刺すようなことはないので、痛みはありません。「テープを使っているのではがす時に、足や顔の体毛が一緒に抜けて痛みを伴うことはあります。(ご了承ください)」

たくさんのセンサーがあって眠れないのではないかと思われるかもしれませんが、ほとんどの方が普段と同じように眠っておられます。

● 各センサーの検査内容 

夜間はナースステーションに看護師がおりますので、何かありましたらナースコールのボタンを押してください。

 


面会時間について

平日:15:00〜20:00
休日:11:00〜20:00

他の患者さまに迷惑のかからぬよう、面会時間をお守り下さい。尚、玄関駐輪場は来院患者さま専用ですのでご用のない方はご遠慮下さいますようお願い致します。

  
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